アンティ・ルール

倫理学のゼミで、ポケモンの話になった時のこと。


掃部関「・・・というわけで、このゲームの中に気になる文面があったので、倫理学的な考察が必要であると・・・」
先生「ちょっと待ってカモンゼキ君。ポケモンというのがどんなものなのかをちょっと説明してくれないかな。」
掃部関「分かりました。ポケモンというのは・・・・・・というゲームです。」
先生「なるほどね。で、そのゲームの目的は何なの?」
掃部関「目的は主に2つで、ひとつは、ゲーム中に登場するポケモンを全種類捕まえ、ポケモン図鑑を完成させること。もうひとつは、捕まえたポケモンを育てて他の人と戦わせ、勝利することです。」
先生「・・・で、勝ったらそいつのポケモンをもらえるんでしょ?
掃部関「いえ、もらえません。勝ったら勝ってうれしいというだけです。」
先生「え? そうなの? てっきりもらえるものだと思ってた。」
ものすごいジェネレーションギャップが感じられる発言でした。


昔は、子供の遊びといったらアンティ(賭け)があるのが普通でした。
代表的なものではメンコやベーゴマ。これらは、負けたら奪われてしまうというルールです。
しかし、現代版ベーゴマである「ベイブレード」にこんなルールはありません。
これは、道義上の問題ももちろんありますが、今のおもちゃが賭けの対象としては高価なものになりすぎたというのが大きいと思います。
ベーゴマなら1個5円とか10円で、1ヶ月のお小遣いの30分の1ぐらいに当たりますが、ベイブレードは700円以上します。1ヶ月のお小遣いの半分なんて賭けていたらやってられません。


トレーディングカードゲームならどうでしょう?
単価は20円〜30円ぐらいなので、1枚ぐらいなら賭けても大丈夫そうな気がします。
実際、トレーディングカードゲームの元祖「マジック:ザ・ギャザリング」には、当初ちゃんとアンティのルールがあったそうです(このルールでやってた人います?)。
ゲーム開始時にデッキの一番上を公開し、アンティ領域に置き、ゲームに勝利したプレイヤーがそれをもらえるというものでした。
しかし、このルールは結局廃止され、現在ではアンティに言及しているカードは使用禁止になっています。


これは、道義上の問題以前に、ゲームとして面白くないからなのです。
アンティがあると、レアなカードや強いカードは取られたくないので誰も入れなくなり、結果コモンカードばかりの単調なデッキが蔓延してしまいます。
アンティの廃止によって、トレーディングカードゲームはより奥の深い戦略が楽しめる遊びに変化したのです。


このように、ゲームに関係のあるアンティはかえってつまらなくなってしまうものなのです。
わかりやすく言うと、マッチごとにクラブを1本賭けるゴルフを想像してみてください。
負けるたびにどんどん戦略が狭まっていくでしょう。