マジック:ザ・ギャザリング「時のらせん」ブロック完結!

1年ほど前にもマジックの記事を書いたことがありますが、今回のブロックはあらゆる意味でハチャメチャで、おもしろいです。復帰するなら今がおすすめかも。
これでお金さえかからなきゃいいゲームだと思うんですが(これでも遊戯王よりはかからない方)。
長くなる上にやったことのない人にはつまらない記事なので、興味のある人は「続きを読む」からどうぞ。


「時のらせん」ブロックは、「時のらせん(Time Spiral)」・「次元の混乱(Planar Chaos)」・そしてもうすぐ発売される「未来予知(Future Sight)」の3つのカードセットからなります。
このブロックのテーマは「時間」で、時間に関連する能力が多数登場するほか、マジックというカードゲーム自体の過去・現在・未来を俯瞰するという大きなテーマをも含んでいます。
それを象徴するのが「タイムシフト」と呼ばれるカード群で、これらはマジックの世界のいたるところから、時空を越えて登場したカードたちです。カード枠が通常と違うものになっており、いかにも「ただ者ではない」という感じがします。
また、各カードセットの名称は、それぞれ過去に登場したカードの名前からとられています。

第1エキスパンション「時のらせん」

テーマは「過去」。多くのカードが過去のカードのオマージュとなっており、大して強くないカードでも、昔やった人なら思わずにやりとしてしまう懐かしいフレーバーを持っています。
この一つ前のセット「コールドスナップ」も、アイスエイジブロックの懐古セットでしたが*1、今回はそれをマジック全体でやろうというわけです。
このセットのタイムシフトカードは、昔のカードの再録。カード枠も昔のカードのものとなっており*2、古参プレイヤーの復帰に一役買ったようです。
ただし、このセットのタイムシフトカードは、強力なレアカードも死ぬほど弱いコモンカードも同じレアリティなので、その辺の情緒がわからないとパックを開けるのがきついかもしれません。
過去のキーワード能力が復活するのは前にもありましたが(たとえば、サイクリングが復活したことがある)、今回はド派手に側面攻撃・バイバック・エコー・マッドネス・変異・シャドー・フラッシュバック・ストーム・ランページ・サイクリング・キッカー・スレッショルド(キーワード能力から能力語に降格)が復活しています。一から覚えるのは大変そうだ。

第2エキスパンション「次元の混乱」

テーマは「現在」と「混乱」。何が混乱したかというと、色の役割です。
白が再生できたり、青が手札を破壊したりとむちゃくちゃなことになっており、「どーせこの色は○○できないから」と思っていると痛い目に遭います。
タイムシフトカードもそれを反映し、過去の有名なカードの色違いになっています。「神の怒り」が黒くなったり、「ボール・ライトニング」が緑になったり、「ブラストダーム」が白くなったり。
また、かつて登場した伝説のクリーチャー*3が、「平行世界からやってきた」という設定の元に違う色で戻ってきたりしています。

第3エキスパンション「未来予知」

テーマは「未来」。もしや未来のカードが再録されるのか?と思っていたら、その通りでした。
今後使うかもしれないコンセプトのカードや、とりあえず作ってみたような感じの実験的なカードが山のように盛り込まれています。
当然のことながらタイムシフトカードはむちゃくちゃの一言で、たった1枚のためだけに存在するキーワード能力や、現状では意味をなさないルール用語が書かれたカードなど、まさにやりたい放題。しかも、そういったコンセプトが実際に登場するのは、何年先のことだか、それとも二度と出てこないのか、誰にもわからないのです。
タイムシフトカードのカード枠は、マジックらしからぬサイバーチックなものになっており、まさに「未来」といった感じ。
未来枠そのものには賛否両論ありますが、バニラクリーチャーは、テキスト欄を省いて一面イラストが描かれており、おおむね好評のようです*4

知らない人の為のルール変更講座

8版・9版で大きなルール変更や新コンセプト導入がありました。知らない人のためにちょっと解説しておきます(6版ルールは説明しきれないので自分で調べてください)。

キーワード能力化された能力

今まで普通のテキストでかかれていた能力がキーワード化されました。6版以降のものを挙げてみます(括弧は変更されたセット)。

  1. 召喚酔いに影響されない→速攻/Haste(6版)
  2. 黒のクリーチャーかアーティファクトクリーチャーにしかブロックされない→畏怖/Fear(オンスロート)
  3. 攻撃に参加してもタップしない→警戒/Vigilance(神河物語)
  4. インスタントをプレイできるときならいつでもプレイできる→瞬速/Flash(時のらせん)
  5. 飛行を持つかのようにブロックに参加できる→到達/Reach(未来予知)
  6. このクリーチャーがプレイヤーに戦闘ダメージを与えるたび、あなたはその値に等しいライフを得る→絆魂/Lifelink(未来予知)
  7. 呪文や能力の対象にならない→被覆/Shroud(未来予知)


また、今後ずっと使われる能力の中に「二段攻撃/Double Strike」が加わりました。
先制攻撃で1回、普通の攻撃でもう1回攻撃する能力です。

壁のルールの廃止

「壁は攻撃に参加できない」というルールがなくなりました。
代わりに、ほぼすべての壁は「防衛/Defender」という能力を持ち、この能力が「攻撃に参加できない」という意味を表します。
クリーチャータイプを壁にして攻撃を封じる、という手はもう使えません。

タイプの欄にはタイプしか書かれなくなった

6版の時に「○○の召喚」が「クリーチャー──○○」になってびっくりした人も多いと思いますが、8版と9版のルール変更に伴い、すべてのカードがこの書式に従うことになりました。
今後、タイプ欄は「(特殊タイプ)(カードタイプ)──(サブタイプ)」の形に統一されます。

エンチャントの書式変更

上記と関連して、「エンチャント(クリーチャー)」などはキーワード能力になりました。タイプの欄には「エンチャント──オーラ」と書かれ、文章欄に「エンチャント(クリーチャー)」と書かれることになります。オーラとは、今まで「個別エンチャント」と呼ばれていたものと同じルールを持つサブタイプです。
エンチャント(場)は単に「エンチャント」になり、エンチャント(ワールド)は「ワールド・エンチャント」になります(ワールドは特殊タイプ)。
私がマジックを始めたばかりの頃、「解呪」というカードの英語版に"Destroy target enchantment."と書かれているのを見て「このカードはエンチャント(場)しか破壊できないのか。」と勘違いしていたのは懐かしい思い出です(今は、英語版だと"Enchantment―Aura"で文章欄がたとえば"Enchant Creature"になるのでそんなお馬鹿な勘違いはしません)。

「アングルード」というジョークセットに「エンチャント(プレイヤー)」というものがありましたが、現在ではこれはリアルで存在することになりました。ほかにも墓地のカードにエンチャントするエンチャントも登場しており、エンチャント先はパーマネントに限るというルールは過去のものになりそうです。

土地のルール変更

「基本」が特殊タイプになるとともに、Basic Landの訳語は「基本地形」ではなくて「基本土地」になりました。
また、基本土地タイプはすべてサブタイプになり、そのタイプ自体に「タップして対応する色のマナを出す」というルールが加わりました。
たとえば、「森」のタイプ欄は「基本土地──森」となるわけです。
これにより、デュアルランドや冠雪地形の表記が楽になり、前者はたとえば「土地──山・沼」、後者は「基本氷雪土地──森」でOKというわけです。
「土地・クリーチャー──森・ドライアド」なんていうカードも登場します。

レジェンド・ルールの変更

クリーチャータイプ「レジェンド」は「伝説のクリーチャー」に変更されました。「伝説のアーティファクト」や「伝説の土地」と一緒になったわけです。これにより、特別なルールのあるクリーチャータイプは一つもなくなりました(サブタイプ全体では8つあります)。
また、従来のルールでは、同名の伝説カードが場に出るとあとから出た方が墓地送りになりましたが、現在では両方とも墓地送りになります(通称「対消滅」)。
リン・シヴィーやアカデミーを先に出せなかったために負ける、という悲劇はもうなくなりました。また、「場から墓地に置かれたとき〜」という能力を持つ伝説のクリーチャーはおいしいことになります。

複数のカードタイプを持つカードが続々登場

長らく「アーティファクト・クリーチャー」しかありませんでしたが、ちょっと前に「アーティファクト・土地」が登場し、なおかつこれがとてつもなく強いことが発覚して全部禁止になってしまったことは記憶に新しいところです(カード単体だけでは強そうに見えませんが、「親和」という能力と組合わさると手に負えなくなってしまうのです)。
「未来予知」では、「エンチャント・クリーチャー」とか「土地・クリーチャー」などというものが登場します。前者は「エンチャント(クリーチャー)」と勘違いしそうですし(英語版は"Enchantment Creature"なので日本語版よりはわかりやすい)、後者は「呪文じゃない」とか「召喚酔いの影響を受ける」とかをつい忘れそうです(一応注釈文はありますが)。

マナコストのないカード

土地以外で、カードにマナコストが書かれていないカードが存在します。これは、「ただでプレイできる」という意味ではありません。「存在しないマナコストは支払えない」というルールが加わったので、こういうカードは全く逆の「このカードは普通にプレイすることはできませんよ」という意味なのです。ちなみに、マナコストの欄に(0)と書かれているのが「ただでプレイできるカード」です。
この手のカードは、プレイするのではなく、カードに書かれている能力を使ったり、「待機」という能力でプレイしたりするためにあるものです。

アーティファクトタイプ「装備品」

装備品はクリーチャーにつけることのできるアーティファクトですが、エンチャントと違うのは、プレイした段階では何にもつかない状態で場に出、「装備」という能力を使って初めてクリーチャーにつくという点です。
また、装備先のクリーチャーが死んでも、一緒に墓地送りにはならず場に残ったままになり、再度ほかのクリーチャーにつけることもできます。
エンチャントの弱点を補った優れたコンセプトですが、「頭蓋骨締め」というカードがあまりにも強すぎ、数々のフォーマットで軒並み禁止にされてしまいました。
未来予知では土地につける「城砦」が登場します。

新カードタイプ「部族」「プレインズウォーカー」

「部族」は、クリーチャーではないものに無理矢理クリーチャータイプをつけるために登場したカードタイプで、「部族エンチャント──レベル・オーラ」などのようにつかいます。
上記の例では、レベルのリクルート能力でクリーチャーではなくエンチャントを引っ張ってきたりできるわけです。
特殊タイプではないのは、特殊タイプにはサブタイプがつけられないためでしょう。
「プレインズウォーカー」も新しいカードタイプですが、現在のところ注釈文に書いてあるだけでどんなカードなのかわかっていません。
今まで、プレインズウォーカーはクリーチャーとしてカード化できないという暗黙のルールがあったので*5、それを破るための苦肉の策なのではないでしょうか。ウルザやフレイアリーズがカード化される日も近い!?(ミシュラはカード化されてるのに・・・)

*1:知らない人へ・・・現在、アイスエイジブロックは「アイスエイジ」「アライアンス」「コールドスナップ」の3種類で、「ホームランド」はブロックから離脱しました。

*2:知らない人へ・・・第8版からカード枠がリニューアルされました

*3:知らない人へ・・・レジェンドは廃止され、伝説のクリーチャーに変更になりました

*4:今までもプロモーションカードでは一面イラストのものがありましたが、それを市販の土地でないカードでやったのは今回が初めて。

*5:プレインズウォーカーとは、マジックの多次元宇宙を自由自在に移動できる存在のこと。マジックではプレイヤーはプレインズウォーカーという設定であり、対等の存在をしもべとして召喚するわけにはいかない、というストーリー上の都合があるものと思われます。