北京五輪:台湾オリンピック委は聖火リレー受け入れを拒否

http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070427k0000m050174000c.html


これ、全然知らない人が見たら「リレーの順番ごときでなんでもめるんだ」とちんぷんかんぷんかもしれません。
そもそも、台湾と中国を同一視したり、そこまでいかずとも香港やマカオと似たようなもの(いわゆる「一国二制度」)だと思っている人も多かろうと思います。まずはそこからお話ししましょう。
・・・といっても、台湾の情勢は油断しているとすぐひっくり返るので私の知識が古くなっていないといいのですが。


現在、我々が「中国」といった場合、それは中華人民共和国の略です。中華人民共和国は、中国共産党が政治の実権を握っている国です。
対して、台湾を統制しているのは、かつては中国国民党が率いていた中華民国辛亥革命以来大陸を支配していたこの国は、毛沢東に敗れてからも消えたわけではなく、台湾に逃れたのです。


戦後、ほとんどの国は中華人民共和国を正当な中国の継承者と認めるようになり、その代償として中華民国は国とは認められなくなってしまいます。それは日本も例外ではなく、日中平和友好条約において「二つの中国を作るという陰謀に加担しない」という約束をさせられてしまいます。「二つの中国」とはいうまでもなく台湾で、現在に至るまで我が国が台湾を正式な国として承認できないのは、これが足かせになっています。日中平和友好条約の破棄は中華人民共和国との国交断絶を意味するわけですから。


ここまでは、中国共産党VS中国国民党のお話。
しかし、中国国民党も「中国は一つ」と思っている人たちです。なぜなら、本来彼らのいるべき場所はあの大陸であって、台湾には一時的に逃れているにすぎないのですから。
しかし、国民党がくる前から台湾にいた人たち(内省人)にとっては、彼らですら部外者でしかありません。そういった人たちは、大陸と台湾は別だ、という考え方が強いのです。


戦後の台湾は国民党による一党独裁が続いていましたが、1996年、内省人である李登輝が総統に就任し、台湾の民主化を進めていきました。
そしてついに2000年、民主主義による政権交代で、中国国民党は野党に転落し、民進党陳水扁が総統に就任します。
この李登輝-陳水扁政権の間に、台湾の独立運動が盛んに行われたのです。
現在は国民党側も力を取り戻し、「大陸は中華人民共和国、台湾は中華民国という別々の国だ」という考え方が世論の大勢になっているようですが、民主化したとはいえこの国の情勢はどっちに転ぶかわからず、予断を許さない状況です。陳水扁総統もいつ引きずりおろされるかわからない状況ですし・・・。


とはいえ、独立の動きがあるとなるとおもしろくないのが共産党で、ありとあらゆる手段を使って、「台湾は中華人民共和国の領土だ」という既成事実を作ろうと画策しています。
たとえば、スポーツにおいて台湾は「台湾」または「中華民国」を名乗れません。旗はオリンピック専用のものを使い、名称も「チャイニーズ・タイペイ(中華台北)」を用いています。
聖火ランナーのルートも、そういった口実の一つに利用される可能性があるわけです。


ニュースによれば、現在提案されているルートは、ベトナム→台湾→香港→中国本土です。ベトナム・台湾・中国は別であり、香港は中国本土との緩衝点と見るべきルートですが、これを中華人民共和国側が「ベトナム→中国→中国→中国」と解釈してしまうと、外交カード上でかなり不利になってしまいます。
台湾としては、台湾と香港の間に中国が絶対に自国領だと主張できない地域を入れたいわけですが、これがなかなか難しい。
近くには沖縄ぐらいしかないですが、中国共産党沖縄は自国領だと主張していた時期があるので、事態がより悪化しかねません。
その辺の事情を加味すると、受け入れ拒否しかないのでしょう。