右も左も分からない

大昔、本家KAMON's STUDIOの前身「E.U.PROJECT」のコラムで、「右と左はなぜ分かりにくいのか」というのを書いたところ、「そんなのはおまえだけだ!」というメールが届いたことがあります。


・・・右と左の区別がとっさにつかないのって、そんなに異常ですか?
だって、西と東はとっさに判断できないでしょ?
「太陽はどっちから昇る?」
「えーとちょっと待って、『西から昇ったお日様が〜東に沈む〜』がマチガイなんだから・・・!」
・・・というような会話は今日もどこかで行われているはず。


ただ、右と左の区別が付かないのは車を運転する上でまことに不便です。
教官に右に曲がれと言われてまず最初にやることは、ミラーの確認でもウインカーでもなくお箸を持つ方の確認です。
でもミラーを確認するとなぜかウインカーを左に出し、教官に注意されてやっと右に曲がったと思ったら入ったのは右車線だったり。
・・・お父さん。私は車を運転すべきではないのかも知れません。


というか、なぜか「右=お箸を持つ方」では覚えられないんです。
幼稚園の時は、母に「右はお箸を持つ方!」と言われても、両手の平を見つめて立ちつくすしかできませんでした。
あれ? 僕ってどっちの手でお箸を持ってたっけ?
ご飯の時間になり、お箸を持って初めて、「ああ、こっちが右なのか」と納得するわけですが、食事が終わると忘れてしまう。


更に、小学校4年生ぐらいになってから野球にはまったのもいけませんでした。
あのスポーツは左右の概念を崩壊させます。
だって、右利き用のグローブは左手にはめるんですよ!?
右利きのバッターは左のバッターボックスに入るんですよ!?
更に、外野のレフトとライトの存在。
この位置づけは攻撃側から見ての話で、実際に守備する側から見たら逆。


そしてガラスの十代、ヨーヨーを始めてから更に大混乱。
ヨーヨーを投げるのはもちろん右手ですが、ストリングの操作は主に左手。
ハイパーヨーヨートリックスの解説を見る時、いちいち「右ってどっちだっけ?」と確認しなければいけませんでした。
余談ですが、そういう意味で、現在の「スローハンド/フリーハンド」という言い方は助かってます。見ただけで分かるから。
そのわりにトリック解説では「右手/左手」という表現を使っていますが、これは冗長になるからです。いちいち確認しながら書いてるんですよ、あれ。
語呂のいい日本語に無理矢理するなら・・・「馬手(めて)/弓手(ゆんで)」*1ですかね。


で、私は将来先生を目指しているわけですが、もし実現したら大変。
先生って、普通は生徒と向かい合って授業をするわけで。
もし、そんな時に左右の話題が出ようものなら・・・
自分が向いている方向とは逆に話さなければいけなくなります。
バスガイドなんかは、右と左を逆にしゃべる特訓をするそうです。
(「右手に見えますのが・・・」と言いながら自分は左手を挙げる)
元の右と左がわからん人間がこんな事をやったら、もう一生お箸を持つ方を確認し続ける人生になるかも知れません。
杞憂に終わるといいですが。

*1:弓道用語。馬手は馬の手綱を引く方の手で利き手のこと、弓手は弓(矢ではない)を持つ方の手で反利き手のこと。